並列実験を加速!分液作業からの開放 〜固相抽出

化学
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こんにちは、ノブです。本日は久しぶりに化学に関する記事です。(読書してオフ会行ってるだけの人ではないところを示さねば!)今回は並列実験操作を加速するためのツール、固相抽出を紹介します。

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実験操作についてのアンケート

先日、twitter上で以下のアンケートを実施しました。ありがたいことに、沢山の人にご回答いただけました。感謝です。

もちろん扱っている化合物、実験テーマ、企業か大学かで使えるツールは変わってきますが、ざっくりとした雰囲気は把握できました。で、私が注目したのは後処理操作の部分です。

手を使い続ける仕事は同時に2つ以上できない

先程のツイートにも書きましたが、多くの人が後処理時に分液操作をしています。そもそも分液は必要?濃縮だけで良くない?というケースも含まれていると思いますが、それはともかく。分液操作には一般的に分液漏斗という器具を使用し、以下の工程で行います。

①反応溶液に水(または反応を停止するための酸や塩基の水溶液)を加え、よく振りまぜる。
②静置することで有機相と水相が2相に分かれる。不要物(酸、塩基、無機塩など)が水相に溶けやすいよう液性をコントロールしておくのがポイント。
③有機相を回収する。水相側に必要物が残っていれば有機溶媒を足し、再び振りまぜる。②に戻る。

スケールの小さい反応であれば、試験管内に水(や水溶性)を加え、パスツールで吸って出してを繰り返して2相に分け…という簡易的な分液操作が可能です。試験管をいくつも並べ、並行して作業することで効率は上がります。

以上のような分液操作で、簡単に水溶性の不純物を反応混合物から除去することが可能です。が、欠点は常に手を使わなければ1つ1つの操作を行えないことです。

有機溶媒を足す時も、振り混ぜる時も、有機相を回収する時も、常に手を使った操作が必要です。そして、人間は常に手を使い続ける操作を同時に2つ以上できません。1つの分液操作をしている時には別の化合物の分液操作を同時には行えないのです。

つまり、反応溶液Aの分液と反応溶液Bの分液は、同時には出来ないのです。出来るのはAを振り混ぜて2相に分かれるのを待つ間にBの操作を進める、という交互操作だけです。

固相抽出のしくみ

企業で研究している人ならご存知の方も多いと思いますが、固相抽出という言葉を聞いたことがない学生の方もいるかもしれません。

固相抽出(solid phase extraction:SPE)は溶液中の不要物あるいは目的物を固相担体でトラップしてやり、それ以外の内容物を洗い流す技術です。除タンパク操作が必要な分析作業などでよく用いられています。今回は有機合成にこのツールを使おう!という紹介です。

固相担体として一般的なものは以下です。
・イオン交換樹脂:チャージが異なる分子をトラップする
・セライト:水や無機塩類をトラップする
・シリカゲル:高極性物質をトラップする
・ODSゲル:脂溶性物質をトラップする

一般的な操作は、以下の通りです。
①サンプル溶液を固相上にチャージする。担体と相互作用する物質が吸着する。

②担体-吸着物に干渉しない移動相を通し、その他成分を押し流す。

③トラップした成分を回収する場合は担体-成分の相互作用を打ち消す移動相を流す。

担体とターゲットの相互作用を利用してガッチリとトラップし、相互作用しないものはそのまま流れ落ちていく、というシンプルながら良くできた手法です。

例えば反応溶液を水でクエンチ(反応停止)処理し、そのままセライト担体のカートリッジにチャージし、有機溶媒を流すことで、水と無機塩類を除去した溶液だけを得ることが可能です。つまり、固相抽出を使えば分液操作は必要ありません。

固相抽出のメリットは操作時間の短さ

では、今回のテーマである固相抽出の作業効率はどうかというと。

先程の図に示しましたが、操作としてはマックスでも溶媒を2回流すだけで終わります。そして、容器をいつくも並べて並行作業が可能です。溶媒を注ぐのに必要な時間はせいぜい10秒ほど。並行作業の効率は試験管分液の比ではありません。

目的物を受ける容器を試験管にすればそのまま吹付け式濃縮装置や試験管濃縮装置にかけることが出来ますので、一気に濃縮も可能です。(濃縮装置がエバポレーターしかない場合は濃縮が律速になります)。

欠点は○○が限られることと、○○が発生すること!

固相抽出の1つ目の欠点は、使用できるスケールが限られることです。担体にトラップできるのはせいぜい数十~200mg程度で、トラップしきれなかった成分は漏出してしまいます。それ以上大きなスケールの反応には不向きです。

そして、もう1つの欠点は…企業では使用されていて、大学ではあまり使われていない、ということで気づいた方もいるかもしれませんが。固相抽出には専用の使い捨てカートリッジやキットが必要です。(担体をバルクで購入することも可能ですが。)

そして、もちろんお金がかかります。分液のように、水と分液漏斗があればできる!という訳にはいきません。使い捨てのため、毎回費用が発生します。

ただし、作業を並列処理して加速したい!少しでも簡単に不純物を取り除きたい!という方には非常におすすめのツールです。固相抽出について知らなかった方は、周りに使用経験のある方がいるかどうかだけでも確認してみましょう。使いこなせば、1日10反応、10処理も夢ではありません。学生の方は教授の先生にお願いしてサンプル取り寄せだけでも体験してみてはいかがでしょうか。

今後も機会があれば同様の実験テクニックや有用ツールの紹介をしていきたいと思います。お楽しみに。

ノブ

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