(有機合成tips)少量多検体での接触水素化反応を並列化

化学
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こんにちは、ノブです。本日は久しぶりに実験手技の話。概要は以下です。

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接触水素化反応とは

二重結合、三重結合、ニトロ基、芳香環上のハロゲン、芳香環そのものなど、幅広く還元することが可能な反応です。また、ベンジル基やCbz基の脱保護などにも使われる非常に重要な反応です。

特徴は、非常に反応がキレイに進行するケースが多いこと。煩雑な精製を必要とせずに、ろ過だけで目的物が得られる例も多々あります。

反応には水素源(H2ガス、ギ酸アンモニウム等)と金属触媒を用います。

問題は選択性

上記のように非常に汎用性の高い有用な反応なのですが、困ってしまうケースも存在します。特に問題となるのは選択性。ある官能基Aは還元したいが同じ分子内にある官能基Bは反応させたくない、というケースは普通にありえます。

上記のような、微妙な反応性をコントロールが必要とされるるケースもあり、接触水素化に使用される金属触媒には非常に多くのバリエーションが存在します。

よく使われる金属種だけでもPd, Ni, Pt, Rhがあり、非常に反応性が高いものから、わざと反応性を落とした金属触媒(被毒化触媒といいます)まで存在します。さらには不斉化反応の条件まで含めると、それだけで学会の1セクションが開けてしまうくらい奥が広い分野です。 例えば選択性を追求したPd触媒の一例です→官能基選択的触媒(富士フィルム和光純薬株式会社のページに飛びます。)

条件検討しよう!

というわけで、接触水素化を極めるには種々の条件検討が必要になります。丁寧に検討するとなると、
・どの触媒を使うか
・溶媒は何か
・触媒をどのくらいの量使うか
・最適な温度はどのくらいか

とチューニングが必要な項目は多数あります。上記項目を5つずつ検討するだけでも5×5×5×5=625条件となり、反応をかける前から気が遠くなります。

加えて、スペースの問題があります。接触水素化はナスフラスコに三方コック経由で水素風船を取り付けて行うのが一般的です。

一般的な接触水素化反応の様子

この「三方コック+水素風船」という組み合わせ、実はそれなりにスペースを取ります。加えて、金属触媒には発火性を示すものが多く、反応はドラフト内で行うことが強く推奨されています。

企業で研究している人でもドラフトは1台/人がせいぜいで、大学などでは数人で1台のドラフトをシェアしていることも一般的。沢山の接触水素化反応を一度に並べてかけるのは物理的に厳しい、という問題がありました。

検討すべき項目は多数あるのに、物理的に多種の反応をしかけるのは厳しい、それが接触水素化という反応です。

危ない妄想をした

なんとかこの問題を解決できないかと、ふと妄想しました。もし部屋全体が水素ガスで満たされていたら、反応溶液に金属触媒を入れて、容器の口は開放したままでも良いのでは?

もちろん、そんな環境にはヒトは立ち入れませんし、ちょっとした火花で大爆発する恐れがあります。おそらく特殊な設備があって初めて可能となるでしょう。では、部屋全体ではなく、「開放系の反応容器の周りが水素ガスで満たされている」という条件ならば、どうでしょうか。

今回私は、その条件を特殊な機器を使用せずに解決する方法を思いついたのです。

こんなの、できました。

上記の考えからたどり着いた反応容器が以下の図になります。

500mLフラスコ内に小型の細長バイアルを複数入れ、フラスコ全体を水素ガスで置換します。バイアルの中身はそれぞれ、金属触媒の種類を変えるなど、検討したい条件を振った反応液です。フラスコ内部が水素ガスで満たされるため、全ての反応液の液面が水素に触れ、反応が進行します。

バイアルの取り扱いですが。蓋をせず、開放系のままピンセットで出し入れします。(発火の危険性があるので、金属製ではなく必ずテフロン製のピンセットを使用しましょう。)また、バイアルを出し入れする前には必ず窒素ガスやアルゴンなど、不活性ガスで十分な置換を行ってください。本記事のマネをして発火事故を起こしても、私は責任を取れません。

実験のコツ

・なるべく少スケールで行う
液面の表面積=水素に触れる面積が小さいので少スケールでないと反応が遅いです

・フラスコ内の水素置換を入念に行う&撹拌を強めにする
一般的な接触水素化反応と同じです。液相がよく水素ガスに触れるようにしましょう。

・発火事故に気をつける
何度でも書きますが、接触水素化には発火事故がつきものです。発火しないようくれぐれも注意を払い、ナスフラスコの下には水を張った洗面器を置きましょう。

というわけで、一度に複数の接触水素化反応をしかける方向について紹介しました。しつこいようですが、発火の危険性など何かまずいようであればお知らせください。本記事はすぐに削除します。

良く使う反応のちょっとしたニーズを解決する方法を探すのも、化学者として非常に楽しい瞬間です。他にもこんなにテクニックあるよ!という方はぜひ教えて下さい!

ノブ

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