こんにちは、ノブです。ここ最近、「自分とは違う世代からの情報の仕入れ方」について考えています。特に「大きく年の離れた若者世代からの情報収集」についての話です。
年長者を尊敬する文化
日本の社会人が今まで経験してきた一般的なコミュニティ(学校・会社・サークル等)では、「年長者を敬いなさい」という考え方が大半を締めているように思います。特に日本では儒教の影響もあり、義務教育過程でもそのような考えを教わります。もはや文化と言っても良いのではないのでしょうか。
この教えの意義は諸説ありますので、解説はそちらに任せるとして。
「何事も経験を積んだ人(ベテラン)の方が知識や技術も豊富で、尊敬に値する。また、長い年月をかけて何かに打ち込んできた過去を評価すべきだ。」
という考え方が強く反映されているのではないか、と私はとらえています。ただ、一方で若者に対する冷遇を生み出す温床にもなっていると感じます。
「キミはまだ学生気分が抜けていないから」
「若造が生意気だ」
「先輩に対して反論するな!」
上記は、私が実際に聞いたことがある(一部言われたことがある)言葉です。理不尽さを感じながらも、言っている側は当たり前の事として主張している状況が当時から不思議でした。
年長者=ベテランではなくなった世界
で、個人用PCやモバイルデバイスが浸透した現在を考えると、「年長者=ベテランというわけではない」「若者は経験が浅く重要な主張ができない、という考えは間違っている」ということは自明ですね。若者でも調査や学習を容易に行えるようになり、年齢が学力や知識力の高さを反映する時代は既に終わりました。
(極端な例ですが、以下は小学生と大学の名誉教授による日本数学会での共同発表です。)
日本数学会の年会のプログラムでひときわ目を引く所属
— MER (@MathEdr) March 18, 2019
池 之 上 “小”
飯高先生と高橋洋翔さん、年の差大体70歳ぐらいのお二人による研究発表。
み、見てみたい……!https://t.co/BNWQ1dl70F pic.twitter.com/MciaDJf8Sn
このような主張をすると、「一部マニアックな経験をしているだけで、人生経験が浅い若造だ!」という反論をしてくる方が出現すると予測します。が、技術・専門知識や趣味や生き方が非常に細分化・深遠化された現在では「一部マニアックな経験をしていることが大きな強みになる」と言いたいです。
若者の知識
で、最近の若者(嫌な言葉ですね)の強みは何か、というと。私は「最近の若者の知識を持っていること」だと思います。
新しい文化も、新しいITツール(アプリ)も、新しい技術も、全て今までの土台を引き継いだ上で、さらなるバージョンアップやイノベーションを起こすことを目指して生まれてきます。科学の世界では「巨人の方の上に立つ」という言葉がありますが、全ては今までの積み重ねの上に成り立っています。
個人的な感覚ですが、若者の方が最新の文化やツールに触れる機会は相対的に多いように感じます。というのも、どの分野でも、ある程度の経験を積むと自分の専門知識や考え方、自分なりの方法論が確立されてきます。これは経験値の蓄積・具現化という観点では良いことである一方、新しい分野を深く学ぶことへのハードルともなることがあります。特に新しいツールへの乗り換えに対する心理的なハードルは、ときに「老害」と呼ばれる人種を生み出す絶好のチャンスとなります。
若者が苦労せずに結果を出すのを許せないおじさん、何とかならないものでしょうか。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) March 20, 2019
楽して結果が出るなら「お前凄いじゃん、どうやったの?皆で共有しようぜ!」で全体の生産性が上がるというのに…😥
その点、若い方の方が自分のスタイルが固まりきっておらず、かつ、仲間との情報交換が盛んに行われる環境を整えやすいように思います。以前参加させていただいたオフ会では、所属が違う大学の学生さん同士でも専門分野をベースとしたコミュニティ作りが行われていて驚きました。
昨日のオフ会で感じたこと。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) November 25, 2018
今はSNSが発達し、知らない人ともコミュニケーションを容易に取れる時代。それをするかしないかで学生時代から情報格差が発生している。
私の学生時代には他所の研究室の学生との交流は限られたイベントや学会でしかできなかったが、今はコンタクトが容易に可能。(続く)
「新しいツールに対するネイティブ」の強み
私の両親はスマホやPCを使いこなせません。両親はITツールなしでも労働が完結した最後の年代だったと思います。(母はワープロを使っていましたが、父は全ての書類を手書きとコピー機で乗り切ったツワモノです)
母に持たせたスマホでGoogle検索や時刻表アプリの使い方、父に持たせたタブレットで将棋アプリの使い方やニュースを見る方法は教えましたが、それ以上の事は何もできないと言って良いレベルです。職場のベテラン勢の状況を見ても
(ガジェット好きや家電マニアなど例外はいますが) 、やはり自分が30~40代に使いこなせていなかったツールへの親和性は相当低くなってしまうように感じます。
かたや私の子供×2は日常的にyoutubeを見て、アレクサと会話しながら生活しています。英語の動画でも気にせずに見ていることもありますし、私や妻が知らないような情報を掴んでくることもあります。
先日お会いしたボスドンさんも同様のことをおっしゃっていました。
今年は上の子の希望でレゴランドジャパンホテルにお泊まり予定。夢があるよね~。
— 会社員ボスドン (@sairyorododayo) March 20, 2019
ちなみに親は存在を知らなかったんだけど、YouTube先生あたりから行きたい場所をどんどん仕入れている模様。https://t.co/ysanUNwJzD
未就学児ですらこの勢いです。なんの疑問もなく新しいツールを彼らの興味が向くままに使用し、自分にとって便利な使い方を見出すでしょう。私は将来、そのような情報を子どもたちから教えてもらうのが楽しみで仕方がありません。
そして、上記のような情報に詳しい割合が多いのが10代後半~20代中盤くらいの年齢層ではないかと思います。つまり、会社で言えば新入社員~若手層です。彼らと適切に接することができれば、最新のテクノロジーや技術、ツール、流行などの情報を効率よく聞き出すことが可能なのではないでしょうか。
既に「逆メンター制度」は始まっている
興味があったので調べてみましたが、世の中では「逆メンター制度」や「リバースメンタリング制度」などという名称で既に仕組み作りを行っている会社が存在します。
(→日本マイクロソフト社の例)
特にマイクロソフト社の例では「どのように若者がSNSを使っているか」「どのような商品が若者に求められているか」というマーケティングも兼ねることができるように思います。
また、Hosokawa Micron社の例にもあるように
「若いメンターたちは、年長社員が抱える障壁を全く問題だと捉えていなかった。インターネットですぐに答えが見つかるとも考えている。」
と、職場全体の生産性向上につながる可能性が大いにあります。簡単な情報でも良いのです。若い世代が知っている便利なPC操作のtipsをベテラン勢に共有する。これだけでも他のことに使える時間が増えるのではないでしょうか。
積極的に自分より若い人から教えてもらう場を持とう
というわけで、「引き続きSNS発信を続けます」「オフ会でも勉強させてください!」といういつものオチなのですが、意識を向けるのは何もオンライン環境だけではないはずです。前述の通り、自分の子供からだって教えられることがありますし、職場の後輩や学会で知り合った若手研究者からも自分の常識を壊してくれるような情報を得ることができます。
教えてもらう際は常に謙虚に。誰であろうと相手は先生であることを忘れずに接することで、よりスムーズに教えを請うことが可能です。私見ですが、年齢や経歴などから発生するプライドは、相手に難癖をつけたくなるだけで何の役にも立ちません。
そしてそのような情報を受信するだけでなく、発信する側に回る意識を常に持ち続けることが重要だと思います。個人には、常に自分より年上の人の常識を覆すためのアンテナを張り続ける人間でありたいものです。
久々に目にしたのでシェア。私が一番好きなのは以下の第一法則。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) March 13, 2019
高名な老科学者が「それは可能である」というときは、おおむねそれは正しい。「それは不可能である」というときは、彼はたいてい間違っている。
常にベテランの常識を覆すよう意識したい。
クラークの三法則 https://t.co/9tQGiUwDfA
ノブ
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