こんにちは、ノブです。本日、大変面白い議論に参加させてもらったのでまとめます。議論のテーマを要約するとタイトルにもあるように、「研究者が生み出した技術を世間一般やユーザーに届ける適切な方法とは」です。
研究とビジネスの関係
我々研究者は日々結果を出しているわけですが、結果を発表しなくてはただの自己満足となってしまいます。発表する方法は大まかに2つ。1つ目は論文や学会などアカデミアの世界に報告すること。もう1つは研究結果を社会に「商品」として発表し、ビジネスを展開することです。
ただし、後者のビジネスに繋げる研究は非常に困難です。実のところ、自分の行っている研究が社会のどこかで商品化されている研究者は少数です。例えば天文学の研究から商品化されるものは図鑑・事典・望遠鏡・プラネタリウムなど限られたものだけで、大半の研究者はそれら商品の開発には関与していません。研究をビジネスにつなげる難しさを嘆くツイートから今回の議論はスタートします。
これは本当に最近の悩みですね・・・技術ベースでのイノベーションをどういうビジネスモデルでリーチしていくか・・・研究しかしてないと全くわかりません
— サイトウシュン/企業と起業のハザマ人 (@chokosh0120) 2018年6月19日
自分の研究をビジネスに繋げるのは研究者だけでは困難。ビジネス展望につなげるのが得意な人と分業、という意見です。私はここから参加させてもらいました。
国内、海外問わずテクノロジーベースのベンチャーでサービス展開を狙っている会社を調べるという手もあります。
私は投資家として行っている情報収集がそこに繋がっている気がします。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月19日
ここで私が例に出したのが以下の2つです。
ベンチャーではないですが、一例を出すとこういう感じです。最初はピザ屋が自動運転?という印象でしたが、現実的な未来を想定して技術開発を行っています。https://t.co/Rgt3sso58O
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月19日
これはトヨタの自動運転技術の開発にアメリカのピザハットが出資して共同開発を目指すというものです。ピザハットは自動運転車によるピザの自動配達を将来構想として提示しており、理にかなった研究投資です。ピザ屋が車を開発する時代なのです。
もう1つはこちら、
過去の例で製薬に関してだと以下のような例がありますね。
この記事だと炎症性腸疾患だけですか、腸内細菌叢の状態は他の疾患との関連も報告されはじめています。https://t.co/ahDlmzwnIS
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月19日
このFinch Therapeutics社は腸内の細菌研究について世界トップクラスの研究力を持っており、過去には感染症を治す経口投与の糞便入りカプセル開発のニュースで世界を驚かせました。(参考リンク)
武田薬品はFinch社の腸内細菌についての研究を炎症性腸疾患の治療に繋げようとしています。
研究からビジネスを作るには
ではどうやって研究をビジネスにしたら良いのでしょうか。以下は私の考えです。
重要なのは、自分達が持っている技術(MOA)がどのような対象に使えるか、という調査を徹底的にやることです。
あるいは、自分達が狙っている対象(ユーザー、患者等)に使えそうな技術を調査することです。
恐らく、上記二点は対象(ユーザー、患者)がどんなニーズを抱えているか把握しないと困難です。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月19日
つまり、世間一般やユーザー、医薬品であれば患者さんやその家族が求めているものを知ることが重要です。そのニーズを把握した上で、研究成果がどの様に適用できるかを考えなければなりません。
研究者にできるのか?
実際、研究者がユーザーのニーズを把握するのは非常に大変です。というのも、研究者のホームグラウンドは研究所の研究室。一般生活者の声は非常に届きにくい場所です。
そうすると特定の疾患についての診断や治療(現在の治療大系)の一般知識と、臨床現場での観察力のようなものが必要になりますね~。これは、(わが国にたくさんいる)生命理学・基礎創薬・生命農学系の基礎研究者がとても苦手な分野といわざるを得ないです。
— tight junction (@piyota0) 2018年6月20日
AMEDも支援しているStanford大が提唱する医療機器開発のオープンイノベーションスキーム「BioDesign」プログラムでは、工学系エンジニアが臨床現場でシャドウイングをして、ニーズ調査を行うことが推奨されていて、進んでいるなあと感じます。もちろん病理学などの基礎知識は必須ですが。
— tight junction (@piyota0) 2018年6月20日
バイオデザインは日本でもプログラムが始まりましたが、もっと広がってほしいですね。医工連携は昔から言われていますが、こういった具体的なプログラムが日本での認知度が上がるといいですね。個人的にはこれまで創薬にどっぷりでしたが、医療機器分野へ興味が傾きつつあります
— Biotech VC (@vc_biotech) 2018年6月20日
日&米にもニーズ調査を行うことが推奨されているプログラムも存在しているようです。
すみません、不勉強で知りませんでした(汗)。
ここから研究とビジネスを繋ぐ方法について議論が進みます。
個人的には、技術的な解決策を探している人と、用途を探している人をマッチングするサービスが有れば良いのかなと、いう気がします。
弁護士さんや、弁理士さん、会計士さんなどが双方の責任分担とか利益配分なんかを詰めてくれたらいう事ない様な、そんなビジネスありませんか?— Nyanco-chan (@radiowatch555) 2018年6月20日
ナインシグマやアスタミューゼといった会社が技術シーズマッチングをやっていると思います。製薬会社もオープンイノベーションでマッチングプログラムを運営しています。オリジナルな要望同士でのマッチングは難しいので、そこをうまくアレンジできる人が増えるといいのではないかなーとおもっていたり
— Biotech VC (@vc_biotech) 2018年6月20日
グローバルに目を向けるとオープンイノベーションマッチングプラットフォームとしてはInnocentiveがありますね。
アレンジする人の重要性同意です。あとは知財問題ですかね・・・社内でまずは同意を求めるところからやらなければならないのは煩わしい限りです。
— サイトウシュン/企業と起業のハザマ人 (@chokosh0120) 2018年6月20日
オープンイノベーションの重要性が論文等で叫ばれて数年経ちますが、ガバナンスの難しさ、成果物の評価法、成果は得られたが実際には使い物にならなかった、など問題も見えて来たように思います。
技術とユーザーのニーズをダイレクトで仲介するビジネスがあれば、Win-Winの関係を築けそうですね。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月20日
自分が知る限りでは仲介業者がマッチングさせていたり、クラウド型のアウトソーシングみたいな募集の仕方で、行われてると思います。まだ機械学習でマッチングというのはないのではと。
— サイトウシュン/企業と起業のハザマ人 (@chokosh0120) 2018年6月20日
医薬品の研究→ビジネスは?
先程も記載しましたが、私は「患者さんや家族のニーズが一番重要」という考えです。
医師によるコンサルが1st choiceになっているのは同意です。
私も患者さんや家族の生の声の方が真のニーズを反映していると思います。情熱への燃料だけでなく、重要な情報が隠されているように感じます。
患者会、ブログ、SNS等は貴重な情報源&ヒント源だと私は考えています。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月20日
医師によるニーズ発信とは別の視点で、薬剤師(特に専門薬剤師)の方からのニーズ・ウィッシュの発信があったらおもしろいな、と常々思っております。薬局で服薬指導したり患者さんのクレームを直接受ける機会も多いと思いますので。そうすれば創薬における薬剤師・薬局の存在感も増すのですが。
— tight junction (@piyota0) 2018年6月20日
専門薬剤師の方も、患者さんの近くで薬と関わるという点では医師よりもリアルな声をピックアップできる存在かもしれませんね。今後、新しい役割を担うことになるかもしれません。
ネットで情報収集&議論はビジネス創出の元!?
今回、議論に参加させてもらい非常に面白かった点ですが、皆どこの誰だか良く分からないメンバーと非常に濃い議論ができたことです。
朝から参加させてもらっているTL上での議論、凄く面白い。
研究技術を世間一般やユーザーに届けるためにはどうすべきか、深く議論されている。
どこの誰かよく分からない相手とでも真剣に話し合える。SNS上での研究者の形が、見えつつあると思う。 https://t.co/6O1VcBaAdH
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2018年6月20日
このような機会に参加させて下さった皆様に感謝します。非常に刺激的でした。SNSの議論が元でサービスでも商品でも成果物を出せたら本当にすごい。ぜひまたやりましょう。ブログのネタにもなるし。
ノブ
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