科学っぽい情報をどのようにとらえるか

ライフハック

先日、妻から聞かれました。
「ご飯食べると早死にするの?」
なんだ?と思いましたが、発端はこのニュース。

<医療>「炭水化物が命を縮める」 衝撃論文の中身とは

今日は、科学っぽい情報についての話です。

どんな分野で?

妻は研究者ではありませんし、なんなら理系でもありません。曰く、
「科学的な知識なんてないし、ネットには情報が溢れすぎててよくわからない。化粧品とか美容グッズとかそれっぽい情報だらけ。」
確かに美容、健康、食品分野では科学的(に見える)情報が溢れています。

歴史を遡ると、時代の権力者達は永遠の命や健康・美容を求めて様々な研究をさせていました。人類最古の文学作品と言われている古代メソポタミアのギルガメシュ叙事詩の時代から、「不老不死の薬を求めて旅に出る」話は存在します。

秦の始皇帝には「当時不死の妙薬とされていた水銀を飲んでいた」という言い伝えもあるようです。美容関連では「美を求め続けたクレオパトラも愛した食品〇〇」なんてキャッチコピーはよく目にしますね。

つまり、美容、健康、食品の領域は人の欲望に直結してる分野なので科学的に見える裏付けをしてやるとヒット商品が出やすいんでしょうね。

例えばこんな広告は?

科学的な(ように見える)ことが書いてある場合、その正しさを判断しなければなりません。例えば、こんな話はどうでしょう。

「健康な人の便をあなたの腸に移植すると健康になる!糞便移植がんばろう!」

不潔に感じる人がいたらすみません。怪しさ満載に見えるこの文章ですが、一部の疾患に関しては実際に有効性が確認されている「便微生物移植」という方法で、現在、世界中で盛んに研究が行われています。最近も「オーストラリアには便の提供者に年間150万円支払う病院がある」というニュースが話題になりました。

では次の話はどうですか。

「飲むと病気になる薬をすごーく薄めて服用すると、その病気に対する抵抗力を得て治すことができる!有害成分を薄めれば薄めるほど治療効果はアップ!自然治癒力がんばろう!」

またまた胡散臭い触れ込みです。ちなみにこの話、由緒ある治療法として体系立てられています。過去には医学的な論文も出ていますし、イギリス王室にもこの療法を受けた人がいるそうです。が、立派なニセ医学で「ホメオパシー」という考え方です。

で、今までの2つの例、どっちがニセ医学でどっちが本物の医学研究かあなたは見分けられますか?

どうやって見分ける?

怪しいな、と感じたらまずネットで調べるくらいはしましょう。最近はWikipediaの科学的なページも充実してきています。それらを調べるのも面倒なのであれば「ニセ科学」というワードともに検索してみて下さい。

例えばこんなふうに。ニセ科学ではないか、と呼びかけるページが沢山表示されていますね。では先程の例はどうでしょうか。

糞便移植 ニセ科学

今度はニセ科学ではないか、というページは出てきません。「にわかには信じ難い」というものはありますが(笑)。

結局、炭水化物はどうなの

例えば先程の炭水化物の記事ですが、タイトルは「炭水化物が命を縮める」となっていますが、使われている写真は茶碗に盛られた白米を箸で掴んでいるものです。

ん?炭水化物って米だけでいいんでしたっけ?調べてみると炭水化物が多く含まれる食品は「穀類・麺類・野菜(芋、かぼちゃ、根菜類)・果物・豆類」です。おや?これら全て食べたら寿命が縮むのでしょうか?果物や豆類なんて体に良さそうな感じもします。

怪しいな、と一応元文献を調べてみたのですが、なんと世界五大医学雑誌のひとつとして有名な「Lancet」です。これは無視できません。ただ、ざっくり読んだ感じでは「炭水化物」としか書いていないので食材は不明です。他にどんな栄養を摂取しているか、各地域の医療水準や衛生状態はどうか等も詳しく言及されていません。数値もばらつきが大きいものもありますし、よくこれで死亡リスクについて断定できるもんですな。

つまり、これだけの情報では正確に判断できません、というのが正しいところではないでしょうか。

じゃあどうすれば良いのでしょうか。ここで最初の妻の発言に戻りますが「科学的な知識なんてないし、ネットには情報が溢れていてよくわからない」という問題にブチ当たります。

良くわからないことは

大体のことは高校で習う範囲内の知識で判断してもらえれば良いと思います。米だけ食べてたら健康的でないから、肉も野菜もミネラルも摂ろうとか。有害物質だろうと何だろうと微量なものを更に10の60乗倍も薄めたらもう効果なんてないだろう、とか。

で、それでも良くわからないことについて私がオススメする方法は「自分が良くわからないことは気にせずしばらく無視する」です。世の中、正しくて効果のあることや止めたほうが良いことは正式に国から採用されたり、公的に呼びかけたりします。「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなります。」という警告表示が義務付けられているように。

一方で、ニセ科学については批判が出たり反証実験が行われたりします。「水からの伝言」はオカルト的要素が道徳教育に用いられたということで、当時大論争になりました。

ですので、科学っぽい情報に対してはすぐにリアクションを取るのではなく、気にせず今までどおりの生活を送って下さい。大抵はウソですので、何もしなければ被害も出ません。米を食べて寿命が縮むのであれば、日本人が世界で一番長い平均寿命を維持し続けている事実は説明できません。ハイテク科学技術っぽい商品を売るテレビショッピングも、ギャラを貰っている出演者が商品にダメ出しをしないのは当然です。

今までどおりでいいじゃん

高齢化社会に突入する前からずっと、世間では健康ブームが続いています。ただ、健康について気にしすぎてストレスを溜め込んでしまう方が精神衛生上良くない、と主張している医師もいるようです。

色々悩むくらいなら、昔から言われている「早寝早起き、腹八分目に医者いらず」程度で良いのではないかと思います。「あの有名人もオススメ」とか「この食材で驚きのダイエット効果」とか耳障りの良い言葉に惑わされず落ち着いて行動することが一番です。

ノブ

 

 

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