こんにちは、ノブです。久しぶりに読んだ本の感想を。今回読んだ本は「FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」です。
大層なアオリとの出会い
どなたかのツイートでこの本を知ったのですが、アマゾンのページで目に飛び込んできたのは「ビル・ゲイツ、バラク・オバマ大絶賛!」というアオリでした。
相当ハードル上がってるけど、ホントに大丈夫?
勝手にそんな心配をしつつKindleアプリで読み始めましたが、結論から言うと買って大正解。自分の認識を改めさせてくれる素晴らしい本でした。
13の難問
本書は、世界にまつわる13のクイズを実際の解答データを示しながら、「なぜこんなにも正答率が低いのか」「2017年時点での世界はいまどのような状況なのか」を解説しています。ほとんどのクイズは正答率が33%以下(著者は「チンパンジー以下」と表現しています)の問題です。
以下、2問だけアマゾンの商品ページから質問を抜粋します。
質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%
質問 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%
さて、皆さん正解をググる前に正解と思う選択肢を選びましょう。私は2問とも間違えました。
正答率が低い理由は10の本能
正答率の低さに関しては、著者の実体験を交えながら、人間が物事をとらえる際に客観的でいられなくなる10の本能やそこから発生する思い込み、人々の行動について解説しています。
どれも身に覚えのあるような具体例で、非常に納得できます。例えば。
飛行機事故があるとニュースは大きく取り上げられ、凄惨な事故として視聴者の心に残ります。飛行機の安全性を疑問視する話題は盛り上がり、空港管理システムやエンジニアは槍玉に挙げられる…。容易に想像できると思います。
しかし、どれくらいの数の飛行機が安全に運行し、フライトに成功したかは絶対にニュースになりません。そんなニュース、視聴者にとって全く面白くないですからね。
実際に、2016年は4000万機の飛行機がフライトに成功し、史上2番目に安全な年でしたが、死亡事故を起こした10機の飛行機だけがニュースになりました。
これは、恐ろしいものには自然と目が行ってしまう、「恐怖本能」をメディアが利用した結果です。
データを正しく理解する&分かりやすく示す方法
上記の様に、世界の真実を正しく把握することを阻害するさまざまな本能と、「その本能をどのように抑えたらよいか」「データを正しく理解するにはどうしたら良いか」というアドバイスは目から鱗でした。
また、著者が得意とする「バブルチャート」という表現手法を用いて、データに分布の情報を視覚的に付与して分かりやすく解説してくれています。
「分布」という言葉は理系の研究者以外ではあまり馴染みがないかもしれませんが、「どのくらいの数がそのカテゴリに当てはまるか」を示したものです。
例えば以下は、本書でも登場する平均寿命×所得レベルのチャートに人口数を円の大きさで表したバブルチャートです。
最高値、最低値、平均値などでは上のチャートのように「どのランクの人がどれくらい存在しているのか」という情報が得られませんが、バブルチャートではひと目で分かる、という仕組みです。ちなみに上の図を見てわかるように、平均寿命が60歳をを下回る国は現在、実はほとんどありません。
このようなデータの表し方は非常に参考になります。Spotfireなどのデータマイニングソフトやエクセルなど表計算ソフトの機能を使えば描画は可能です。今後、仕事でも大いに活用していきたいと思います。また、付録には解説データや引用元もきちんと記載されていて好感がもてました。
大切なのは自分の心構え
世界の事実を正しく理解するためには、正しい情報も必要ですが、巷には大量の情報が玉石混交で存在しています。また、世の中には目を引くタイトルであやふやな情報を流すメディアも存在しています。
「ファクトフルネス」より。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2019年1月10日
化学物質恐怖症が流行りだすと(中略)食べ物に合成化学物質が混入しているという「新事実」が見つかったりする。
しかしあまりにも微力なので、その食べ物を貨物船一隻分、3年間食べ続けない限り、命を落とすことはない。
TL上では、毎日のように目にする話題ですね。
「ファクトフルネス」よりモザンビークの首相経験者の談(要約)
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2019年1月12日
「(経済成長の)数字が間違っていることもある。だから祭りの日に市民の履き物を確認する。裸足か、ボロ靴か、いい靴か前年と比べる」
この視点、今の日本にも必要なのでは。企業の業績だけでなく、国民の生活水準がどう変化したのか。
メディアを批判するのではなく、ここで一番大切なのは「その情報をどのようにとらえるか」という自分の視点だということを学びました。
「ファクトフルネス」読了。最後まで刺激的でした。後で感想書きます。
— ノブ@化学者/研究者の生き方を考える (@chemordie) 2019年1月13日
訳者のお二人が書かれたように「世界を知らない自分、本能を抑えられない自分」に気づかせてくれる本です。
情報を信じていいのか?の前に、自分は事実を見る準備ができているか?と問うことが大切。https://t.co/HgVeNhDaAT
世界は絶望的でもなく、良い方向に向かっています。ただし、救いや改善が必要な人々も確実に存在します。そんな世界を知るために、そして、10の本能に流されず世の中を正しくとらえるために。オススメの本です。
ノブ
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