研究室の学生について

化学

こんにちは、ノブです。

今日は研究機関に所属する学生と社会人の違いについてです。パッと思い付くのは給料が発生するかどうかですが、取り巻く環境など色々と考えてみましょう。今回は特に学生の環境にフォーカスします。

学生は修行の場?

学生は「自分から望んで(かどうかは人それぞれですが、)勉強しに来ている」という立場です。日々の研究生活を続けるには学費がかかりますし、長時間労働を抑止する制度もありません。

基本的には国からの補助金(=税金)や学術振興団体からの援助でやりくりしているため、贅沢はできません。もちろん最先端の機器はほとんどなく、高額な試薬や装置は使えないこともザラです。

私が学生だった頃は、ドラフト(排気装置)は多くても部屋に2つ。部屋には6~8人いましたので、危ない反応以外には使えません。もちろん有機溶媒には曝露しまくりです。頭も作業効率も悪かった私は、そんな環境に15~18時間/dayいました。

D2(ドクター2年目)からは週7日毎日大学におり、「日曜日だけは夕方帰っても良い」という自分ルールの中で生活していました。当時の口癖は「時給50円で良いから誰か出してくれないかなー。」

うん、今考えると狂ってますね。心身ともに病んでいるメンバーも普通にいました。体調を崩す者、いきなり研究室に来なくなり、いつの間にか除籍している者・・・。

さて、ここまで悪い点ばかり列挙してきましたが、もちろんメリットもあります。

学生のメリット

一つ目のメリットは大学の研究室が研究機関でありながら教育機関でもあることです。なので学びの場が公式に用意されています。研究室で一般的なのは論文紹介のセミナーでしょうか。

最新の論文をひとつ選び、睡眠時間を削って作った資料で研究室メンバーに解説して、教授や先輩方からのダメ出しでボコボコにされるイベントです。学生は半泣きの状態で(泣いてしまうケースも)、訂正の為の追加調査を行います。あいつは不勉強な奴、という不名誉を何とか跳ねのけようと必死に努力します。

こう書くと「やっぱりブラック環境」と思われるかもしれませんが、これは貴重なことです。「何の責任を負うこともなく間違ったことを訂正してもらえる。もう一度、汚名返上のチャンスをもらえる。」という環境は社会人ではなかなかありません。

社会人の場合は、程度によりますが間違いや失敗に対して様々な罰則があります。人事評価ダウンや始末書の提出、部署異動や懲戒処分など、シビアな制度があります。

学生は一人前になるための修行期間で、ある程度の失敗は許されます。私もたくさん失敗しました。今でも当時の研究室メンバーからその話題でいじられたりします。ポイントはその失敗をバネに、さらに努力できるかどうかです。

将来のネットワークを作ろう!

学生時代は友人間の繋がりが社会人と比べてかなり強いです。そのため他所の研究室との交流、情報交換も盛んです。

私が学生だった頃は有機化学系の研究室で合同の飲み会が定期的に行われ、知り合いを増やす機会がたくさんありました。その中で気になる仕事をしている人がいた場合、個人的に連絡を取り情報交換をすることも容易にできました。

社会人でこれは非常に困難です。自分の仕事内容は秘密情報であり所属先の財産ですから、秘密保持契約なしに共有することはできません。

学会で他者の研究員と食事を共にすることがあっても、当たり障りのない範囲(既に論文化されている内容)での情報交換に限られます。気軽に連絡をとりあうこともなく、二度と会うこともないケースがほとんどです。

また、研究者は別の業界の人と交流する機会がほとんどありません。メディア関係者・公務員・営業職・医師・法律関係者・一般消費者などと触れ合っているのは、ごく限られた人だけです。

ここでどれだけ学生時代のネットワークを活かせるかが、その人の情報収集力を大きく変えます。知り合いから秘密情報ではない範囲で「○○ってどうしてる?」「こんなルールある?」という情報収集が気軽にできるのは、一つの強みになるでしょう。

有機化学系の学生であっても将来進む進路は様々で、どんな繋がりが役に立つか分かりません。学生時代はどんどん知り合いを増やしたほうが良いのです。

まとめ

書きたいことはもっとあるのですが長くなるのでこの辺で。学生時代は、とにかく研究を成功させなくては!と実験にのめり込みすぎるのもあまりよくないように思います。失敗しても重い責任は問われませんし、学生にしかできないこともたくさんあります。

ただし、時間は有限であることを常に肝に銘じましょう。理想的には「研究とコレを頑張った!」と胸を張れる学生生活にしたいですね。

今後はドクター、マスター、学部生の違いについてのまとめや社会人にフォーカスした記事も書きたいと思います。

ノブ

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